アグリー・ドラム・スモーカー製作記 その2 設計
大きいスモーカーが欲しくなったのでドラム缶スモーカー(アグリー・ドラム・スモーカー:UDS)を造ることにしました。今回は設計です、
その1はこちら
UDSの設計については、Google検索して調べると、ある程度定石といえる設計が分かりますので、今回はその定石を踏まえつつ、以下の方針としました。
・フタはドラム缶のフタを使う
UDSの設計でまず決めるのが、Weber Kettleのフタを使うかどうかです。Weber Kettleのフタが使えると、網を高い位置に設定できるので、網の段数を増やしたり、熱源と食材の距離を離すことが出来たりと色々と有利です。残念ながら今回のドラム缶は幅が大きくてWeber Kettleのフタが使えなかったので、ドラム缶のフタを利用することとしました。
・ベントはシンプルな構成とする
ネットでUDSを調べると、給気ベントに管継手用のボールバルブ、エルボ、長ニップル等で高い位置に設置したり、排気ベントに大きな煙突を使ったりして、派手に飾ったものが目に付きます。しかし、これらは見た目は派手ですが、スモーカーとしての機能には特に関係ないと思われます。また材料代で5千円以上は余分にかかります。
そこで、給気ベントは単純な穴4つ空けてマグネットで開度を調整する機構としました。また、庫内の気流を分散させるのに排気ベントは1箇所に集約せず、小さめの穴を多数開けることとしました。
・遮熱板の設置
UDSはチャコールバスケットの真上に食材を置くため直火となります。スモークBBQは直火厳禁ですが、火からある値以上の距離を取れば問題ないとされており、ほとんどのUDSはそれを踏まえた設計となっています。しかし、2段目の網の食材は直火を避けることが出来ませんし、高温で調理する場合は火から離れていても悪影響があると思われます。そこで、Weber Smokey Mountainと同じように食材と火の間に遮熱板を設けることにしました。遮熱板設置用に網をもう1段追加し、合計網3段の構造としました。
・温度計は常設しない
UDSの見た目の特徴に、常設された大きなバイメタル温度計があります。いかにもスモーカーっぽくて格好いいのですが、スモーカー内の温度は場所によってばらつきが大きく、温度計と食材付近の温度は大きく違うことが多いです。なので、Fireboard等で網の温度を測定していれば、高くて性能の良い温度計を常設する意味は無いと思い、温度計は常設しないこととしました。でも、見た目が寂しいのと、出張調理などでFireboardが使えない場合に、温度計を仮設できるようにグロメットを取り付けています。このグロメットはプローブ(温度計の針)を突き刺して固定できるのと、プローブホールとしても使うことが出来る優れものです。
そして引いた図面がこちら。実際は寸法が入ってるのですが、分かりやすく見せるために削除してます。次回は製作編です
アグリー・ドラム・スモーカー製作記 その1 ドラム缶調達
Weber Smokey Mountain 18.5インチよりも大きいスモーカーが欲しくなったので、ドラム缶で自作することにしました。ドラム缶スモーカーは通称アグリー・ドラム・スモーカー(UDS)と言われています。
まずはドラム缶の調達。Weber Kettle 22.5インチの部品が流用できるサイズの200リットルの鉄製ドラム缶を使うことにします。
ドラム缶を火で炙ると、塗装や内側のライナーから揮発性有機化合物が発生するので、これらを全て除去する必要があります。塗装等を除去する一般的な方法は、ドラム缶を薪で満杯にして焼き尽くすのですが、我が家の裏庭では火事が心配でとてもできません。また、ショットブラストで塗装を飛ばしてしまう方法もあるのですが、値段的に現実的ではありません。
そこで、ドラム缶の塗装を剥がすのではなく、ドラム缶メーカーから塗装前のドラム缶を取り寄せることにしました。そして届いたドラム缶がこちら。
本体と蓋の全面が加熱・ブラスト処理されて鉄生地の状態です。素晴らしい。
残念ながらWeber Kettleの蓋は合わなかったのでドラム缶の蓋を使うことにします。これから2-3週間でUDSを完成させる予定。楽しみです。
【BBQレポート】スモークチキンを焼きました
鶏肉の準備
先週の日曜日、近所のオーケーストアで九州産の丸鶏が2kg1380円(税別)と激安だったので買ってきました。丸鶏の捌き方は背骨に沿って包丁を2箇所入れて背骨を除去した後、胸を手のひらで強く押して、平らにして完了。結構簡単です。包丁の代わりににキッチンばさみを使うとより安全です。
鶏肉のRubは塩コショウ1:2にガーリックパウダー、オニオンパウダー、パプリカを少量加えたもの。配合は豚肉の場合と一緒です。それを、オリーブオイルにからめてペースト状にし、鶏皮の内側に手で塗ります。あと鶏肉の表面にオリーブオイルを塗ってから表裏をRubします。2kgの丸鶏に対してして、100ccほどのRubを使いました。
スモーカーの準備
今回は比較的高温で調理するので、Weber Smokey Mountainよりも温度が上げられるWeber Kettleに、Slow 'N Searを組み合わせて使いました。Weber Kettleの操作方法はこちらが詳しいです。
Slow ’N SearはWeber Kettleをミニ・オフセットスモーカーに変身させる便利なチャコールバスケットです。Weber KettleのPitの片側にSlow’n Searを配置し、Slow ’N Searが置かれていない網にはアルミフォイルを敷いて、下から吸気した空気がSlow 'N Searの方だけに流れるようにします。
Slow 'N Searに約50個の豆炭を入れておきき、その上に20個の着火した豆炭を広げて投入しました。未着火豆炭に徐々に引火させながら一定の加力を維持するMinionメソッドという方法です。
BBQ
上下ベント全開で目標の350°F(177℃)に達したら、鶏肉を豆炭から一番遠い反対側にセット。間接焼きのための2ゾーンセットアップです。燻煙材はリンゴのウッドチャンクを1個使いました。肉温度測定のために、鶏肉の胸と腿にFireboardのミートプローブを挿して蓋をして調理開始。
肉温度はFireboardの他、完成を見極めるためハンディタイプの温度計で数箇所チェックしました。鶏肉は生焼け厳禁ですので、安全のためです。ちなみに肉温度は胸肉165°F(74℃)、モモ肉170°F(77℃)が完成の目安です。2時間後に完成。
頂きます
2時間レストして頂きました。美味しくて一人で半分食べちゃいました。ちょっと失敗だったのは、保温中にアルミフォイルにくるんでしまったこと。パリッとした皮が水蒸気でモイストになってしまいました笑。パリッとした皮のまま保温するのってどうすればいいんでしょうね。
【イベントレポート】''What's Smoke BBQ''にゲストスピーカーとして参加
3/10(土)に浜松のOctagon Brewingのインストアイベント''What's Smoke BBQ''にゲストスピーカーとして参加してきました。
Smoke BBQについて、Octagon Brewing代表の平野君とスモークBBQってなに?といった基本的な話から本場テキサスの最新事情まで1時間程度お話させていただきました。
トークの後は、Octagon Brewingの人気メニューBBQコンボプレートのスペシャルバージョンを参加者の方限定で用意させていただきました。BBQコンボプレートはブリスケット、ポークリブ、プルドポークのBBQ3種に、コールスローとパンが付いてくるお得なセットメニューです。
BBQコンボプレート。1500円は安すぎのような。。。
参加者限定のスペシャルメニューはビーフリブです。ビーフリブは日本で提供しているBBQレストランは殆ど無いので、参加者の方はラッキーだったと思いますよ笑
当日のお昼前から仕込みを開始。250°Fでイベント直前までスモークしてギリギリで完成しました。すごくいい肉で結構な肉厚でした。
完成したビーフリブはこちら。我ながらかなりいい出来で美味しかったです。もっと食べたかったなぁ。
Octagon Brewing Beefribs #yasunagaya
ゲストPitマスターのSさんと記念撮影
イベントは2時間程度で終了しました。興味を持って聞いていただいて、予想以上に色々な質問やご意見をいただきました。皆さん長い時間お付き合い頂いて、ありがとうございました。BBQの量が足りるか心配でしたが、殆どの方がお腹いっぱい食べられたようでよかったです。
また、当ブログの読者の方が何名かイベントの前後に会いに来てくださいました。1名の方とは少しお話ができましたが、スモークBBQが趣味でオフセットスモーカーでスモークしているとのこと。お肉の調達などについてお話をさせていただきました。今回のイベントではBBQに興味がある方と直にふれあうことができたのも良かったです。機会を作ってくださったOctagon Brewingさんに感謝です。
スモークBBQのおいしさについて その2 スモークリング
スモークBBQの見た目の特徴はスモークリングとバークです。スライスした断面に出来た口紅のようなスモークリングと、樹皮のように黒黒と成長した表面のバークは、我々スモークBBQ愛好家には、出来栄えの指標として味と同じくらい大事なものです。今回はスモークリングについて紹介します。
バークはこちらの記事参照。
スモークリングって何?
スモークリングは肉をスライスした時に、肉の表面から深さ10mm程度までに見らるピンク色のリングです。タンパク質が変色したもので、ピンク色ですが血の色ではありません。スモークリングを生焼けのお肉と勘違いする人がいますが、肉温度は200°F(93℃)以上と、いわゆるウェルダンより高い温度に上がってますのでご心配なく笑
どのようにして出来るの?
スモークリングは、筋肉中のミオグロビンというタンパク質と一酸化窒素(NO)と一酸化炭素(CO)の化学反応で形成されます。NOとCOはBBQ中の薪や木炭が燃焼してるときに発生するので、ウッドチップチップやスモークウッドで発生する白い煙は関係ありません。私も以前、立派なスモークリングを作ろうと大量のウッドチャンクを投入してモクモクと白い煙を出したことがありましたが、無駄な努力でした笑
ミオグロビンの色は加熱されると変化し続け、牛肉の場合はスモークリングの形成は約170°Fで終了します。肉に溶け込んだNOやCOは肉の色をピンク色に留め、NOとCOが溶け込んでいない肉は温度上昇とともに変色して褐色になります。NOとCOは肉の深部まで拡散することはできませんので、肉の表面だけに口紅のようなピンク色のスモークリングが形成されます。
立派なスモークリングを作る方法
■肉を湿らせましょう
スモークリングの形成が止まる温度は、肉の温度が約170°Fに達するときなので、表面にスプレーやモップをすると、肉を冷やしてスモークリングを成長させます。また肉の表面の水分によって、NOの凝縮が促進され、スモークリングの形成を助けます。スモーカーにウォーターパンを置くことも、肉を湿らせることになるので有効です。
■Low&Slowで調理しましょう
スモークリング形成には肉の温度170°Fに到達するまでが勝負です。なので肉を低温の状態から調理開始したり、スモーカー温度を低温で調理すると、NOとCOに晒される時間が長くなるので、スモークリング形成には有効です。この理由から、肉を常温に戻さず冷蔵庫からすぐにスモーカーに入れるトリックを使う人もいます。
■脂肪をトリミングしましょう
脂肪の下にはスモークリングが出来にくいです。脂肪にもNOとCOは浸透しますが、脂肪にはミオグロビンが含まれないので、ピンク色にはなりません。脂肪の下までガスが浸透すればスモークリングが脂肪の下に形成されまが、脂肪層が厚い場合、スモークリングは形成されません。スモークリングを作るには予め脂肪を可能な限りトリミングするのが大事です。
■煙は関係ありません
スモークリングはNOとCOとミオグロビンの反応ですので、ウッドチップやウッドチャンク、スモークウッドの白い煙はスモークリングには効果がありません。
白い煙はスモークリングと無関係です
どんな味がするの?
実は、スモークリングは味には関係ありません笑。見た目の美しさを楽しみましょう。現にBBQコンテストではスモークリングは審査対象としない場合があるようです。ちなみに下の写真はスモークリングの無いブリスケットと、スモークリングが立派なブリスケットの比較写真ですが、明らかにスモークリングがある方が美味しそうです笑
どこで食べられるの?
立派なスモークリングを見たかったら、スモークリングにこだわりのあるお店で食べましょう笑。Octagon Brewingはオーナーの平野氏のこだわりで立派なスモークリングが楽しめますので、機会があれば是非。
Octagon Brewingのブリスケットとスモークリング
【イベントレポート】スモークBBQと担々麺パーティー
日曜日にスモークBBQと担々麺イベントを開催しました。
料理はBBQ5品、汁なし担々麺の合計6品でした。
ブリスケット
USが在庫切れだったので、ちょっとお高かったですが栃木のしもつけ牛をオーダー。届いたのは残念ながらポイントのないフラットのみ。フラットだけでも元の重量は8.6kgと巨大でしたが、ハンバーグの食材用に多めにトリミングしたら4.8キロになりました。
塩コショウ1:1でRub。Weber Smokey Mountainにフックで吊るして8時間半スモーク。次にクラフト紙でテキサスクラッチして4時間。合計12時間半で完成。8時間ほど寝かせてサーブしました。
交雑牛だからかモモ肉のように赤身たっぷりでしたが、適度にサシが入っていて上質なフラットでした。なんとなくスモークドTriTipに似てる感じ。吊るして直火に当たってるので、もっと乾燥するかと思ってましたが、意外と大丈夫でした。でも吊るしたときはアルミフォイルでテキサスクラッチするほうがいいかな。
ポークベリー・バーント・エンズ
これは過去最高の出来でした。Teppei君から良質なチルドの四元豚が入手できたおかげです。自家製BBQスパイスでRubしてWeber Kettleで2時間スモーク後、アルミパンに入れてバター、砂糖、はちみつで1.5時間煮た後、仕上げにBBQソースとリンゴジュース、りんごジャムを絡めて焼きます。別名ミートキャンディ。
我が家ではあっという間に売り切れるため肉の麻薬と読んでいます。調理中の写真、カロリーを想像すると恐ろしくなります笑 しかし今回もあっという間になくなりました。やはり肉の麻薬です。
ベイビーバックリブ
お肉は外国産の冷凍バックリブを解凍してもらったものを使用。塩コショウ1:2でRubして、WSMに3枚吊るして2時間スモーク後、テキサスクラッチ1時間。フォイルから出して15分くらい表面を焼いてサーブしました。
吊るしてスモークしたときの仕上がりは3枚均等でしたが、テキサスクラッチして網に置いた場所によって3枚の仕上がりに差が出たので、ベンドテストでチェックして完成した順に1枚づつサーブしました。バックリブはバラリブよりも脂肪が少なめなので、ちょっと淡白な感じですね。自分はバラリブの方が好みかな。
プルドポーク
ポークベリー同様、チルドの四元豚を使いました。塩コショウ1:1でRubしてWSMの網の上で4時間スモーク後、アルミフォイルで2時間テキサスクラッチ。3時間ほど寝かせてサーブしました。
外側は立派なバーク、中身は狙い通りホロホロに仕上がりました。コールスローとパンに載せて自家製のビネガーソースで食べていただきました。
自家製ハンバーグ
ブリスケットとポークベリーの端材と玉ねぎと塩のみで作りました。Weber Kettleで直火で10分位直火で焼いてサーブしました。低能力のフードプロセッサーのせいで、超粗挽きですごく肉肉しいハンバーグなのですが、それが好評でした笑
汁なし担々麺
今回のイベントのスペシャルメニュー、汁無し担々麺。自転車仲間のヌマさんに出張クッキングして頂きました。以下ヌマさんからのレポートです。
汁なし担々麺
・天気が良かったのと「BBQに焼きそば」的なイメージで、汁なしをチョイス
・味の濃いお肉とでもくどくならないよう、酢(特に黒巣)の配合を増やし酸味を立たせた
・BBQ肉と変化をつけるため、桜海老と海鮮XO醤で海の香りを演出
・鶏ガラスープは生姜と葱を効かせて、BBQの後でもさっぱりと。
・自家製辣油はニンニク、生姜、花椒、豆鼓、八角、桂皮等でじっくり香りをつけたマイルドな辛さ
干しエビの入った和風な風味と、数々の自家製食材をふんだんに使った今まで食べたことのない担々麺は絶品でした。ヌマさんありがとう!
その他
ブリスケットとプルドポークは完成してサーブするまで、クーラーボックスで保温しました。完成からサーブまでブリスケットは8時間で200→125°F、プルドポークは3時間で200→150°Fとかなり高い保温性でした。
イベント総括
前日の夕方から調理を開始してから終了まで26時間程度と長丁場でした。5品のBBQ全て完璧というわけには行きませんでしたが、及第点の仕上がりだったかなぁと思います。汁なし担々麺は絶品。汁ありも食べてみたいなぁ。次回は未定ですが、2ヶ月後くらいかなぁ。